オリジナル版を再見したので、なぜ自分がリメイク失敗と感じた理由をもう一度考えた。
そして2つ重要な理由を再発見した。
それは 倒すべき悪役の不足 と 世界観の構築
以下相変わらずネタバレ
まずは悪役の不足
確かにオリジナルにもリメイク版にも警察サイド、OCPサイド、犯罪者サイドという3つのキャラ陣営がある。
だが大きく違うのは、それぞれが代表する意味。
オリジナルでは、
警察(マーフィーとルイス)は基本的に社会の秩序を代表する、つまり善良と正義
OCP側はロボコップ開発主任ロバートが代表する金と地位しか考えない商人、どっちらって言うとグレイゾーン。
そして犯罪者と手を組んだ副社長リチャード・ジョーンズ、つまり悪の黒幕。
犯罪者サイドでは、
凶悪なメイン悪役クラレンスとその一味。
それぞれ個性溢れるキャラである同時に、対立関係が極めて鮮明
これによって、ロボコップの復讐も「悪を倒す」という大義名分を得た。
そして激しい戦いの末、クラレンス一味を一掃して黒幕のリチャードを制裁したあと
ロボコップもやっといろんな悩みと怒りから開放され、胸を張って自分のことを「マーフィー」と言い張れる。
あと、こういう正義と悪がはっきりした対立も非常に爽快感がある。
なにしろ、マーフィーがロボコップの力で悪人を次々倒してゆく姿は我々一般人が見たかったものだ。
悪は滅びた!という展開を見た後、気持ちいい爽快感がある。
だがリメイク版では、OCPはただのクレイゾーン。
犯罪者サイドの存在があんまりにも薄すぎて後半までにこいつらの存在を完全に忘れ去った。
そしてさらに今回は一般市民サイド、つまりマーフィーの家族もあるので、
単純に善と悪の対立した図式も崩れた。
後半、犯罪者組織は怒ったマーフィーに瞬殺されたので、
ラスボスもOCPになって貰わないといけない状況になる。
だがずっとグレイだったOCP側がいきなり完全悪になる理由もあんまりないので、
ここからのストーリーは強引すぎる発展にしか見えない。
「もうロボコップが必要がない状況だからあいつは消えて貰おう」
だがこれでOCP社長もマーフィー謀殺未遂なので、マーフィーの「こいつをぶっ殺す」リストに入ってしまう。
たしかにこれは社長が悪いだが、別にこいつを殺しても何の達成感も爽快感も悲壮感もないから、
それにこいつもそんな極悪人でもないし...ラスボスとしてはどうかなって...
結局社長を倒したあと、心にもやもや感しか残ってない。「別にこいつを殺さなくてもいいじゃん?」
むしろ殺さずにちゃんと逮捕する方が達成感があると思う。
あと、世界観の問題
オリジナル版では、近未来のデトロイトはもう世紀末状態ほどの犯罪者天国になってしまう。
映画内に映った街中の様子などから見ればその世紀末っぷりも一眼瞭然。
さらにカオスなニュースやCMにより、コレ絶対一般人もどこかおかしいだろという印象を与える。
つまり、ロボコップの世界は全体的に、イカれてる。
だがリメイク版では、デトロイトはどうなってるのはあんまり見せてくれない。
本当に機械化警察が必要するほどの犯罪都市なの?という疑問も少々感じさせる。
それにマーフィーの家族の存在も重要
簡単にいえば、マーフィーの家族はこの物語における「一般人」を代表する役割だ。
マーフィー一家は只の常識人なので、
オリジナルのように、やはり一般人もなにかおかしいという前提もなくなる。
イカれる世界観のオリジナルと完全に違って、リメイク版は普通の世界になる。
だがこれで、この世界は機械化警察が必要だぞ!と言い張るのは、単純にOCPの利益のため、
そして汚職警察があって警察が機能不全の2点だった。つまり、我々が住む世界と同じだ。
こうしてロボコップは実はイカれた世界に希望をもたらす存在、
という悲劇ヒーローである側面も弱くなる。
確かに警察側の駄目っぷりもあるので、ならロボコップはやはり必要だろ?
だがオリジナルのように犯罪者たちが街中に対戦車ライフルでヒャッハーするような真似はしないし、
ロボコップのような強すぎる法律の番人が本当にいないと駄目ともいいにくいかも
さらに、今回のロボコップは特に「相対的に小さな犯罪」を裁くシーンがないんので、
オリジナルのように「ロボコップがいってよかった!」のような感じが薄くなって、
結局、リメイク版のロボコップはただOCPの宣伝商品としての一面がより強くなる。
で、コレは何の問題になるのかと言うと、やはい爽快感ですよ。
宣伝工具になりすぎて、どんな悪も見逃さないロボコップの強さも足りないから、
これで映画を見ても気持ちいいほどの快感もないんだ。
悪不足そして世界観のよるロボコップの存在意義
リメイク版は爽快痛快が致命的に足りなくなる。
やはりもうちょっとアクション映画によくある正義VS悪、こういう単純な対立関係を重視して欲しいな